ブログ・エッセイ


『月刊満洲』の執筆者たち(続)、16 大林太久美、17 岡雄一郎、18 高井恒則、19 高畑信三郎、20 清水喜一、21 中溝新一、22 須知善一

16 大林太久美―撫順警察署長
大林は『月刊撫順』昭和4年6月号に撫順警察署長の肩書で「撫順に於ける衛生状態と清潔デー」を書いている。
大林は明治23年岡山県赤磐郡笹岡村の生まれ、満鉄四平街および撫順の警察署長、東京吉原や渋谷などの警察署長を経て昭和7年満洲国に入りし、民政部事務官幣務司保安科長・海拉爾警察庁長・大東公司参事などを歴任し満洲労工協会参事となった。

17 岡雄一郎―満鉄参事、満洲電業
岡は『月刊撫順』昭和4年10月号に、高井恒則・高畑信三郎・清水喜一とともに「批判並に感想」を、昭和7年7月号に「ナンセンス一問一答」、『月刊満洲』昭和8年12月号に「こんな人物なら-人位使つてもよい」、昭和14年11月号に満洲電業会社理事の肩書で「随筆 創作「オイルセール」を讀んで」を書いている。
岡は明治24年の生まれ。大正2年に旅順工科学堂電気科を卒業し満鉄参事ののち昭和10年10月に満洲電業に入社し工務部次長のち運転部長・建設部長で常務取締役。『岡雄一郎追悼録』(岡雄一郎追悼録編集委員会編 太平電業 1993年)がある。

18 高井恒則―満鉄総務部検査課主査、満洲電業
高井は『月刊撫順』昭和4年10月号に、岡雄一郎・高畑信三郎・清水喜一とともに「批判並に感想」、『月刊満洲』昭和8年11月号に「こんな人物なら一人ぐらい使ってもよい」を書いている
高井は明治23年富山県射水郡塚原村の生まれ。明治44年東亜同文書院を卒業して満鉄に入社、総務部検査課第三班主査、奉天省実業庁顧問、同省総務庁財政科長、理事官などを歴任し、昭和9年12月満洲電業に入社、哈爾浜電気局次長奉天支店長、本社経理部長を経て満洲電気化学工業理事。

19 高畑信三郎 撫順炭坑
高畑は『月刊撫順』昭和4年10月号に、岡雄一郎・高井恒則・清水喜一とともに「批判並に感想」を書いている
高畑は明治25年京都市木屋町の生まれ。大正7年九州大学工科を卒業し翌年満洲に渡り撫順炭鉱に勤務。東郷採炭所副所長。嚶鳴会にはいり謡曲梅若流をたしなむ。
 
20 清水喜一 撫順炭鉱・満洲炭鉱
清水は『月刊撫順』昭和4年10月号に、岡雄一郎・高井恒則・高畑信三郎とともに「批判並に感想」を書いている。
清水は新潟県中頸城郡も出身。大正7年早稲田大学商科を卒業し満鉄に入社。撫順炭鉱楊柏採炭所庶務主任などを経て昭和11年12月満洲炭譲に転出して阜新礦業所経理課長、次長。昭和10年2月北票炭礦取締。岡雄一郎―満鉄参事、満洲電業
『月刊撫順』昭和4年10月号に、本誌の「批判並に感想」を書いた岡雄一郎・高井恒則・高畑信三郎・清水喜一はいずれも満鉄・撫順炭鉱に勤務した人物であった。

21 中溝新一 児童文学者
中溝新一は『月刊満洲』昭和8年7月号に橋本八五郎と「吾らの發兵救護案」、昭和10年1月号には落葉山人が「中溝新一先生漫傳」を書いている。また昭和11年7月には何人かの共通テーマ「九官のいたづら」、昭和12年1月号には「朝食会発起の弁」を書いている。
中溝は明治24年東京市麻布区木村町の生まれ、児童文学者である。父は化粧品会社で出版社「玄文社」も営んだ伊東胡蝶園の職員清一郎である。東京で婦人雑誌や児童雑誌の編集、児童評論の執筆などをおこなう。また三歳で亡くなった長男のために童話集『豚ちゃんの記録』を出版した。大正9年11月に渡満し、大連新聞社編輯局学芸部長、大陸社嘱託を経て中日文化協会編輯部主事となり中華女子手芸学校講師を兼務している。
洋楽にも造詣深く評論も書いた。詩作も多く作曲が附されたものもある。川柳もよくして号を韻大尉といった。地元大連で子供会を組織して活動写真などの上映もおこなう。常盤小学校訓導青山氏と「満洲子供新聞」の発刊を志ざし、常盤小学校機関誌「コドモ新聞」を発行している。大連ロータリークラブ会員。さらにエスペラントの活動にも熱心で、中日文化協会内に大連エスペラント会を組織して幹事となった。大連青年会幹事、満洲仏教青年会幹事も務めるなど幅広い活動をおこなった。
『満蒙』『大連図書館報 書香』『新天地』などにも多く執筆している。『趣味の滿洲』(中日文化協會 1931年)では編者として名前があがる。昭和17年刊行の『小沢太兵衛伝記』(小沢太兵衛顕彰会伝記編纂部編刊)に寄せた「親分小澤太兵衛氏談義」ではその肩書は大連市職業紹介所長とある。昭和46年3月21日歿。

22 須知善一 コレクター
須知は、昭和10年6月号の『月刊満洲』に「撫順城の持つ魅力」を、昭和12年1月に「日満親善を破壊するもの」という文章を寄せている。
須知については、市道和豊の手になる『満州を駆け抜けた男・須知善一』(室町書房 2010年)、『満州の曠野に非ず』(室町書房 2012年)の著書をもとに、2021年1月4日のブログで書いた。