ブログ・エッセイ


『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』の刊行、武久出版、出版事情、NACSISの所蔵状況

2016年12月13日

しばらくブログのアップができなかった。気分が、自分の仕事に大きく左右されることから、余裕がないときには期間が開いてしまう。これはブログ主としてはあまりよろしくない傾向ではある。
11月に上京して、拙著『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』の刊行について、高田馬場にある武久出版と詳細を詰めてきた。この時期にはちょうど、『辞書』の「人名索引」と「事項索引」の作成に励んでいた。さらにその後、武久のご担当から版組の見本が送られてきてあれこれと検討していたからであった。
本の版面、つまり辞書本文の活字のポイントと行間のことなのだが、これは重要な問題だ。版面での読みやすさ、バランスのよさ、そしてこれは大事なことだが総ページ数にともなう印刷経費、これらを考えあわせて、あれやこれやと検討していた。ご担当が親切で、また適切な助言もしてくれて助かった。
送ってもらった組見本は、8ポ、7,5ポ、7ポのものと、そのそれぞれ異なる行間の見本だ。当初は、お手本にと考えていた、とある人名辞典が7ポだったことから、7ポでいこうかと目論んでいたのだが、実際にこうして見本を見せてもらうと、どうしても8ポが読みやすく、目に優しい。読者にとってもそうなのだが、年末年始と、自分に課せられる校正作業のことを考えてみると、これは自分のためでもあると思い、奮発して8ポでお願いした。4月刊行予定だ。
著者は岡村、編輯刊行はおおすみ書屋、刊行は武久出版だ。武久はどの取次にも扱いがあるので、版面を読みやすくして図書館などでも買ってもらわねばならない。初刷が全部捌けてもまだまだ赤字だ。

今回は、自費の制作だが取次ルートに乗る版元からの出版ということで、自身の出版形態としては初めてのケースだ。
これまでわたしは、科研や大学での出版物は別として、数冊の本を刊行することができている。そしてそのそれぞれは、異なる出版社で刊行形態もさまざまなものだった。こうした異なる版元、異なる刊行形態というのも、もちろんそのように強いられた場合もあるのだが、出版および出版流通への興味関心から、版元は自分で選んて決めた場合も多い。
この出版社および出版流通が異なる、という実情については、大学での「現代出版文化論」や「図書館情報資源概論」などの授業でも、事例としてとりあげたりしてきた。自分の著作だから実情を遠慮なくさらけ出せるし、正直なところが語れる。こんな、「著者何部持ち」なんてことは、普通研究者は言わないし、言いたがらないもんな。そんなことからこうした実態を正直に話すことで学生諸君も結構喜んでくれる。それに受講生のうち幾人かはかならず、出版や本、古書店に関心を持っている学生がいることから、おもしろがってもくれる。
こうして自分で、異なる出版社や、さまざまな刊行形態で出版すると、例えばNACSISのような、大学など研究機関での所蔵状態も、いろいろに見えてきて興味深い。司書課程の授業などで、自著の刊行のこの「悲喜こもごも」を話すときに、あわせて、NACSISの所蔵事情も示して講義をする。売れるか売れないか、出版社や本の内容、利用者層により異なる。そしてまた自費の刊行で取次経由でない場合の、大学図書館での所蔵は、わたしの寄贈によっている。つまり大学図書館の所蔵は、著者であるわたしの寄贈の如何にょって決まっているいうことである。受講生諸君には、だから図書館で多様な本を収集しようと思ったら、新聞記事や学会誌など出版情報をチェックすることが大事なんだよ、と型通りに語るのだが、著者としてのわたしとしては、自分の意志でNACSISや国会図書館の所蔵状況が変わる、ということにもなるから、ささやかでつまらぬことなのだが、ちょっと嬉しい気分になる。
ここで自分の著作の版元と刊行事情、それにNACSISの所蔵状況(本日現在)を古いものから順に示してみる。科研の成果物および大学で刊行したものは省略した。

1 『表現としての図書館』1986.2 所蔵館110館
処女出版。300部の著者持ち。数年後に版元在庫分は再販をはずされ自由価格。
2 『遺された蔵書 満鉄図書館・海外日本図書館の歴史』阿吽社 1994.12 所蔵館173館
著者持ち分なし、印税もなし。
3 『江戸の蔵書家たち』講談社 1996.3(講談社選書メチエ71) 所蔵館177館
印税あり、2刷まで。
4 『「満洲国」資料集積機関概観』不二出版 2004.6 所蔵館115館
著者持ち分なし、印税なし
5 『日満文化協会の歴史-草創期を中心に』私家版 2006.10 所蔵館50館
自費出版。索引を別刷りして経費約100万円。一部は金沢文圃閣が「日本の古本屋」で販売してくれた。
6 『満洲出版史』吉川弘文館 2012.12 所蔵館147館
科研の出版助成に落ち、大学から50万の助成、著者持ち分約50万円で刊行
7 『京大東洋学者 小島祐馬の生涯』臨川書店 2014.11(臨川選書29) 所蔵館53館
著者持ち分なし、印税もなし
8 『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』武久出版 2017年4月刊行予定
出版経費は著者持ち、編輯制作はおおすみ書屋、取次

これまでの出版のなかで、わたしが印税をもらってもっとも誇らしかったケースは、講談社メチエの『江戸の蔵書家たち』だった。そしてもっとも悲しいケースは、『表現としての図書館』が、持ち分300部を抱え、のちに再販を外されて自由価格で販売されたことだった。
こうしたわたしの著作はもちろん古書でも流通していて、その値付けはさまざまだ。わたしとしては、「本の持つ価値のひとつは古書価格だ」との強い考えがあり、いつも気になって、切ないことだが「日本の古本屋」のサイトで自分の本がいくらで売られているかえを時おりチェックしている。さらにまた、古本屋の店頭で自著がひどく安い値段で並んで売られていたりすると、本に対して、すまない、まことに申し訳ない、という気持ちが強く働いて、ついつい買ってしまったりする。あまつさえ、その本が再販外れのものであったりすると、ますますその気持ちが強くなり、その場で腰を屈してしまうほどだ。再販はずれであっても、地に○Bの押印ではなく、せめて○Aなら、と馬鹿なことを考えながら、買うのだ。古本屋の主人には、これはわたしの本なんですよ、なってことはけっして言わないのはもちろんである。
このように、これまでいろんな出版社から、いろんな形で刊行してきた。次は経費こそ刊行自費によるものだが、出版流通については取次ルートだ。そして定価も発行部数も自分で決められる。刊行成ったら、がんばって図書館などへも売り込まねばならない。(2016年12月13日記)

atudou