ブログ・エッセイ


家庭菜園、撤退の危機、腰痛三人衆、草刈り、猛暑

我が家庭菜園が、幾度目かの危機に瀕している。危機といっても、それはずっと付きまとっていたことであり、いわばわたしたち老齢者につきものの危機である。腰痛・ひざ痛・動悸・めまい・夜間頻尿など、お医者さんに相談しても、あれこれと対処法を説明してくれた末に、まあお歳ですからね、と暗に陽におっしゃるのと似ているかもしれない。高齢になり、いつ家庭菜園から撤退するかという、何年も前から繰り返し繰り返し問い問われてきたことである。
そういいながら、ここ何年間も、この腰痛三人衆でなんとかやってきたのだったのだが、そのうち一人の奥方が春ごろに脳溢血で倒れてしまい、介護が必要になってしまった。倒れてからかれこれ10か月ほどになる。今では、デイサービスやリハビリなども軌道に乗ってきたようだが、なかなか畑に出かけるという気分にはならないみたいだ。それはそうだろう。まずは奥方のケアと家事万端を軌道に乗せてこなしていくという日常が最優先で、菜園など後回しの後回し、その後の後であろう。それにご本人も脊椎狭窄症を抱えている。
とはいえ、「いつかは…、すこしでも…」という気持ちも捨てがたく、完全に手を退くとか辞めると宣言することもためらっている様子だ。この気持ちもよくわかる。
もう一人の菜園仲間はぎっくり腰の不安を抱えている。それをだましだましやってきているのだが、梅雨時分から秋口にかけては、作業量に比べて雑草の生い茂るスピードがはるかに凌駕して来ることから、夏の暑い季節になるともうお手上げ状態、雑草に完全敗北である。
夏野菜を植えるところまでは順調なのだが、昨今の猛暑酷暑の時期になると、もはや太刀打ちできず、一面雑草だらけにあいなる。そうなってしまうと、ナスやキュウリ、トマトなど、せっかく実をつけた夏野菜の収穫もままならない。
わたしはといえば、昔から坐骨神経痛を抱えているのだが、そちらは毎朝20分ほどのヨガ簡易体操で今はすこし鳴りを潜めている。それでもひざ痛やめまいなどが、時々起きたりする。だがここまで畑の作業は何とかこなしてきた。酷暑猛暑の時期も、5時の日の出と同時に畑に出動、7時過ぎ、暑くなってきたら帰宅するという具合でしのいできた。そんなこんなで、猛暑酷暑が一段落するころには、わたしの畑の領地以外は、ものすごい雑草に覆われてしまっていた。
それを見かねて我が菜園の地主さん、以前にお約束いただいた畔(あぜ)の草刈りだけでなく、草ぼうぼうになってしまったわたしたちの農地の畝(うね)の草も刈ってくれていた。
そしてこの間のことだ。稲の刈り入れ準備に来られた地主さん、畑でお会いすると、「あとで少しお話したいのでそちらに行く」とおっしゃった。ほらきた、畑の今後のことにちがいない。
地主さん、作業を終えて畑に来られ、開口一番、「どうしはる?」「しんどいのとちゃいますか?」。
うーーーん、そうだろうな、心配になるのはよくわかる。菜園は惨憺たる有様なのだ。あれこれと実情とわたし(たち)の希望をお話しした。そして、他のメンバーと話し合ってみます、とお答えするにいたった。
地主さんは終始、わたしたちには好意的であった。もしあなた(岡村)だけでも続けたいとおっしゃるなら、地代は三分の一でよい、また他の畑地は適宜草刈りをするからやりたい分をおやりになったらよい、むりせずやれる分の畑を使えばよいと言ってくださる。ただ地主さん、「お願いしたいのは、草刈りをしやすいように、飛び地はやめて、耕作地を一か所にまとめてほしい」と、それだじぇだった。ありがたいお申し出である。
その後三人の腰痛三人衆は個別に話をしてみたのだが、はっきりした方針も出ず、ただ耕作地を一か所にまとめる、地主さんが草刈りしやすいように四角くまとめる、耕す畑地は岡村農園分から順次、一畝ずつ、やれる範囲で耕していく、耕地はとりあえず全部を借りておくことにするという、何とも煮え切らない結論になった。いつ出てくるかわからない腰痛持ちらしい、何ともすっきりしない結論になったのである。
そして現在のところ。ぎっくり腰の友だちは、わたしの畑地から南方へ4,5畝を耕作し、今も南下中。奥方の介護を抱えている友だちの持ち分だった領土は、かれが復帰するまで、いや復帰しないかもしれないが、とりあえず少しずつわたしが耕すことになったのである。
いささかオーバーワークになったのだが、まあ致し方ない。畑地を一か所にする、四角くまとめるという、あいまいだが至上の命令を遂行しつつある今日この頃である。 2024年11月8日 記