ブログ・エッセイ
一昨年の暮れに、奥方が二度ほど転倒した。一度目は洗濯のさなか、コードに足を引っかけ、おでこから倒れ込んで柱の角でしこたま打った。ひどく打ったのだが、後頭部ではないことから、救急車を呼ぶということにはならなかったのだが、その後内出血で、おでこから目まで血が下がってきて実に悲惨な顔の状態になった。
二、三日後、一週間後、一か月後と、ともかく大きな症状もなくて済んだのだが、人からは、なぜ救急車を呼ばないか。ためらいなく救急車だと、そばにいたなにをぼんやりしていたのだ、とわたしはひどく非難された。そして一か月後でも決して安心はできないという人からの忠告で病院に行ってMRIを撮ってもらった。まず大丈夫だろうということで、結果的には事なきを得た。昨秋のわたしのひどいめまいの時もそうだが、救急車を呼ぶというのは難しい。
その後に奥方はもう一度玄関で転倒した。シチュエーションはこうだ。わたしが畑から帰ってきて、その気配を察した奥方が、玄関の鍵を開けノブを回してドアを開けてようとした。そのとき奥方は、玄関のたたきに降りずに足を玄関の上に置いたまま体を伸ばしてドアを外に押したものだから、わたしが外から玄関を引いて開いたそのタイミングがぴったりと合ってしまって、奥方は、ドアノブをもったままこれも顔から玄関に倒れ込んでしまった。このときはわたしも現場にいて、けっして加害者ではないのだが、重要な参考人でもあったからひどくショックを受けた。
そんなこんなで、この転倒とは直接の関係はないのだが、一階で洗濯して二階のベランダに干しに上がるのがしんどい、一階に物干し場が造れないかということになり、相談の結果、玄関横の和室の南側にテラスルームを造ることにした。一月の末に出入りの業者さんに相談して、出来上がったのは三月ももう末のことだった。
家の造作や大きな買い物など、この先のことを考えると、果たして元は取れるだろうかと思案するのだが、これは奥方の強い希望だったので、すぐさま決定を見た。
三月末に出来上がって、晴れて物干し場のテラスが完成した。六畳ほどのこの部屋はガラス張りのテラスルームなので、太陽が出ると、暖かいことこの上ない。
洗濯物干しだけではもったいないのではないかと、そう考えたわたしは、小さな勉強机を持ち込んで、寒い冬はここで暖房なしで仕事をすることを考えた。
奥方が難色を示したことは言うまでもない。もとよりこれは物干し場のつもりである。またここで物を置いて引き散らかされてはたまらないと。なるほどもっともな言い分である。だがスペースがもったいない。しかも冬場はぽかぽか暖かいのだ。いささかの小競り合いの末、わたしはかろうして四分の一ほどの領土の割譲を受けて、ここで日向ぼっこ方々仕事をすることが可能となった。冬場は寝るときに足元に置いている湯たんぽのお湯を朝に沸かし、潜水生地でできた愛用の足湯たんぽにいれ、快適に過ごしている。
このテラス、冬場でも太陽が出ると、暖房はいらないぐらいに暖かいから、わたしがこのテラスの四分の一の机に移動する。午後になると二階のアトリエに移って絵を描く奥方にしてみれば、一階の暖房が消せるので、わたしのこのテラスへの移動も好印象で、城内平和を保っている。ちなみに奥方のアトリエは一六畳ぐらいあって、エアコンも完備だ。わたしの二階の仕事部屋はエアコンもない。まあ壁には隙間なく書架を置いていたから、エアコンを設置できなかったという事情もあるにはある。
このテラス、冬でも太陽があれば、22度から24度ぐらいまで上る。今これを書いている午後二時過ぎ、部屋の温度は二十三度だ。これに足湯たんぽをして、寒くなれば体に毛布を巻きつければ、4時ごろまではここにいられる。
そしてもう一つのメリットは、春先からになってからだが、自家製ヨーグルトがうまくできることだ。先般、シロカのパン焼き器を買って、これにヨーグルト製造の機能もついているのだが、どうも満足のいくヨーグルトに仕上がらない。以前に足湯たんぽで作っていた時の方がおいしくできる気がする。冬場の今は、まだまだテラスでのヨーグルト製造は難しいが、もう少し暖かくなったら、テラスの昼間の温度で十分に出来上がる。この方がうまくできる気がする。簡単だし電気代もいらない。
というわけで、ともかく、なんとか元を取らねば、と必死になってテラスを活用している今日この頃である。 2025年1月18日 記