ブログ・エッセイ
畑、長靴、ワークマン作業靴、雨蛙、クマバチ、作業小屋
畑、長靴、ワークマン作業靴、雨蛙、クマバチ、作業小屋
畑に行くというのはわたしの日課である。これが、日常生活にあってはわたしの唯一の「ウオーキング」である。
そんなことから、畑までの片道20分ほど往復40分の行程に、どんな靴を履いていくか、これが大きな問題なのだ。まあ大きな問題というほどでもないが、ともあれ、歩きやすく楽しく出かけたいものだとは思う。そのように考えたら、歩きやすい「ウオーキング・シューズ」、これが望ましい。
しかしながらこの「ウオーキング・シューズ」で畑に行って、畑で作業をしたら、たいへんに汚れる。すぐにドロドロになる。しかも、雨上がりの畑だとすぐに水が靴へと染みてくる。もちろん使い古しのシューズをおろすのだが、底もへたっていて、ますます作業には向かない。
そこで、歩くのにもそんなに負担感のない「ワークマンブランド作業靴」を使うことにした。そしてこれで半年ぐらいを通ってみた。まずまず、ではある。だがしかし、いかんせんこの作業靴は長靴ではないから、雨上がりなどでは、ワークマン作業ズボンの裾に泥がついてしまのだ。
さらにまた、畑作業で靴底についた泥もそのまま家まで運んで来ることになる。この作業靴は、春に建て増したサンルームの床下に収納してあって、玄関のたたきに座って着脱している。そうすれば、いきおい畑の泥や土が玄関周りに散乱する。汚れるのだ。帰途、どんなに泥や土を落としても、少しは家までついてくる。これが奥方の気に召さない。もちろん、気づいたらほうきで履き出すのだが、水分を含んだ土はその時にはたたきにくっついて履き出せない。
いろいろ考えた末に、長靴を一足、それと二足あるワークマンブランド作業靴の一つを畑に置くことにした。道中はウオーキングシューズで行って現地で履き替えるというわけだ。
こんな何でもない方式なのだが、これには悲しい前史があり、けっこう問題をはらんでいたのである。
以前の、作業小屋があった時期には、畑に長靴を置いていた。しかしながら作業小屋なんて場所は、肥料やネットなどがたくさん置いてあって、整理が行き届かず、雑然としている。ゴキブリとかほかにも小動物が生息しているし、なにより蛇がいたらこわい。ここに長靴を置くのはいささかためらいを感じる。しかも農具小屋は、建ててしばらくすると、波板の間から雨漏りがし始める。さすれば長靴が濡れてしまうというのは必定である。そしてこの作業小屋は、畑撤退を見据えて数年前に取り壊した。
そんなことから、長靴は、畑に支柱を立ててそこに下向けに置いていた。ところがある時、足を入れたら、むぎゅっと嫌な感触。なんだろうと脱いで恐る恐る振ってみると、そこから登場したのは雨蛙だった。雨蛙はかわいい。かわいいのだが、足を入れてみて、得体のしれないものを靴中で踏んだりするのは気持ちのいいものではない。これで一気に嫌気がさした。
じつはその時期、作業用のゴム手袋も、支柱に指から差し入れて置いていたのだった。ところがある時指を入れたら、激痛。あれあれ、これは悪虫に違いないと、これも恐る恐る取り出して正体をみてみると、それは熊蜂だった。熊蜂に刺されたというわけだった。これも嫌になった。まあ嫌気がさしたり閉口したりしたのはわたしだけでなく、雨蛙もクマバチもそうだったろう。同情申し上げる。
今回のワークマンブランド作業靴と長靴を畑に置いておくという決断の陰には、こうしたわたしの悲しい体験、いやな思い出があり、それを踏まえた上でのことであったのだ。
今回の長靴と作業靴を畑に置く件、結論的に言うと、しっかりした袋にワークマンブランド作業靴および長靴をいれて入れ口を輪ゴムでしっかり止め、へんな輩が闖入してこないようにと、厳重な措置をとったというわけだった。
これでしばらくやってみよう。しかしながら、現地で袋から取り出して履き替えるというのはけっこう面倒そうだ。長続きするかなあ。それにまた、思いもかけない事態が起こらないかな。それも心配ではある。 2024年6月22日 記
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