ブログ・エッセイ


日本テレマン協会演奏会、一日乗車券、近江鉄道、日枝尋常小学校、加古川市観光案内所、加古川市の石仏

昨日(10月8日)は、夜に大阪市公会堂で開かれる日本テレマン協会の演奏会に行く予定があったので、そのついでというか、その勢いを借りて、というか、JRの一日乗車券3600円を奮発して早朝から列車に乗りに出かけた。今回の一日乗車券には近江鉄道のフリー乗車券もついていたので、もよりの大住駅から木津、加茂、ここからディーゼル関西線の列車で柘植へ、草津線に乗り換えて貴生川へと向かった。
いつもは、時刻表で乗車駅や乗換駅の時刻を書き出して、そのなかの都合の良い時間を選んでいくことにしているのだが、今回は、その作業を怠って、ネットの乗換案内で一本に決めて出かけたものだから、乗り換え駅の木津で時間待ちをしていて、もう一本遅い時間の出発でもよかったことに気づいた。わたしの検索が下手なのだが、これがまず小さな失敗だった。
加茂から伊賀上野までの、左側に木津川を眺めなることのできるディーゼル列車は、実に楽しかった。運転手横で前方車窓を見ていたのだが、急なカーブや、少しだけの高低差を乗り越えて、ようやく平坦地まで出てきたときの、このディーゼル列車の、何というか、安堵感というか、達成感というか、凌いだぞ堪えたぞという気分をいっぱいにみなぎらせて快走する姿が、ほほえましく感じられて大好きである。
こうして柘植に到着、乗り換えの待ち時間もあまりなくて草津線に乗車、貴生川へ。貴生川駅では30分ほどの乗り換え時間があった。この間に、ちょうど信楽高原鉄道が入線し、草津線の列車も入ってきたので列車がホームに並んだ。信楽高原鉄道は本数もないことから、これはラッキーだった。信楽が舞台の朝のドラマの影響なのか、列車に乗り込む乗客もけっこういて、少し安心した。
わたしの乗る近江鉄道は、彦根行、折り返し列車が入ってきたので乗車して運転手横に陣取る。動き出して前方を見ていると、この近江鉄道の貴生川-八日市線は、線路に草も生えていていささか寂しい状態だ。また架線を支える電柱も木製のものがずいぶんと残っていて、なかなか厳しい経営状態がうかがえた。
八日市駅でしばらく時間調整をして出発、わたしは数駅先の豊郷で下りた。豊郷から米原に向かう列車は、通常は一時間に一本なのだが、この時間帯に限って、30分後に出発する。
豊郷には、アニメで「聖地」にもなった旧豊郷小学校や伊藤忠記念館もあるのだが、30分後の列車に乗る予定だったことから、いま執筆中の一庭啓二伝の、一庭の三女陸が勤めていたという旧日枝尋常小学校の後身の日栄小学校を見にいくことを優先した。案の定、その往復で精いっぱいだった。
豊郷から米原へ、ここから新快速で加古川へ向かった。出発前の早くに列車が入線していたので、車内でおにぎりを食べた。景色が特段美しくなくても、ぼんやりと車窓を眺めるのが好きな鉄道好きのわたしにとっては、まず至福の時間ではある。ウトウトしながら、大津、京都、大阪、神戸と県庁所在地を四都市も越えて走っていく。この列車では一番後ろの車両に乗ったので、また昼間の移動でもあったことから乗客も少なく安心ではある。
加古川駅で降りた。一日乗車券におまけでついている「駅りんくん」の自転車を借りて、前もって下調べをしてきた石仏巡りだ。予定は2時間。家から自転車用のヘルメットを持ってきて用意万端。
まず加古川駅の観光案内所で地図をもらって、そのついでに、加古川には石仏がたくさんあるのだが石仏の所在地図はないか、と尋ねてみた。年配の男性職員と女性職員がいたが、ないと言われた。そうか、加古川は石仏がいくつもある町でけっこう知られているのだけれど、と言ったら、年配の男性が、そこの商店街を入ったところにもお地蔵さんがある、という。ちょっとピントの外れた会話になったことから、それに見かねた女性職員が、こんな地図ならありますと、駅附近の散歩用の地図をくれた。ここに、2,3か所の石仏の所在が出ていた。
ともあれ、家で調べてきた石仏が固まって所在する場所付近に自転車で向かう。知らない街で、道路事情もわからないとあって、なかなか目的の石仏には到達しない。その理由を考えてみるに、思っていたよりも駅から遠かったこと、加古川に架かる橋や国道県道などには、自転車用の白線はおろか、人が通るスペースもないこと、などだ。ヘルメットはかぶっているものの、どんどん追い越していくダンプカーなどが怖くて、生きた心地がしなかった。
結局めざす石仏は一つも見つからず、あえなく全敗。目的地が、寺や神社内ならともかくそれが路傍に在ったり墓地内であったりすると、まず見つかるまい。その集落に矢印や案内板でもあれば別だが、もとよりそんな手立ては講じられていない。加古川には石仏はけっこうあるはずなんだがなあ。マイナーな趣味の人相手ではあるが、地図を作製するとか、案内板を出すとか、こうしたささやかな手立てであってもよいのではないか。それで、街の振興にも少しは役立つと思うのだが。
JRの一日乗車券に、自転車の貸し出しが無料でついているのにこだわったことが今回の敗因であった。こんなことなら、豊郷で一時間後の電車に乗って、豊郷小学校や伊藤忠記念館を見学すればよかった、と反省しきりの1日になった。
2021年10月9日記